棗は薄茶用の抹茶を納める漆器で、果実の棗に似たふくらみが名の由来です。まず覚えたいのは大きさの三段階。迷ったら中棗——これが最も標準で、どんな点前にも使えます。
| 大棗(おおなつめ) | 堂々とした姿。濃茶の茶入代わりに用いられることもある。 |
|---|---|
| 中棗(なかなつめ) | もっとも標準的で流通も多い。最初の一つに。 |
| 小棗(こなつめ) | 小振りで愛らしい。旅箪笥や小間のしつらえに。 |
| 平棗(ひらなつめ) | 背が低く平たい形。風炉の薄茶に涼しく映る。 |
| 尻張棗(しりはり) | 下部が張った形。据わりがよく、落ち着いた印象。 |
SHIN-NURI — 黒無地
黒漆を塗り重ねただけの無地。利休好みの基本で、どんな席・どんな季節にも合います。装飾がないぶん、塗りの質がそのまま出ます。
最初の一つは真塗が間違いありません。
TAME-NURI — 朱を透かす
下地に朱を塗り、その上から半透明の漆を掛けたもの。使い込むほど下の朱が透けて見えてきます。灯りの下で美しい。
経年で表情が育つ、育て甲斐のある塗り。
MAKI-E — 金銀の絵
金銀の粉を漆で描く日本の代表的な装飾技法。四季の草花や風景を描いた棗は、棗のいちばんの華です。
図柄の季節を席の時期に合わせて選びます。
RADEN — 貝の輝き
貝の内側を薄く切って嵌め込む技法。光の当たり方で青や虹色に変わり、夜咄の灯りに映えます。
貝の浮き・欠けがないか要確認。
IKKANBARI — 紙と漆
和紙を貼り重ねて漆を塗った軽い作り。飛来一閑に始まる千家十職の技で、侘びた風合いが持ち味です。
非常に軽く、水気には特に弱い。
KIJI — 木目を見せる
漆を厚く塗らず、木目をそのまま見せるもの。素朴な席や、名残の頃のしつらえに似合います。
乾燥と湿気の変化に弱いので保管に注意。
薄茶を入れる器は棗だけではありません。総称して薄茶器(うすちゃき)と呼び、形によって名前が変わります。棗はそのうち最も普及した一形式です。
| 中次(なかつぎ) | 円筒形で、胴の中央に蓋の合わせ目がくる形。棗と並ぶ基本。 |
|---|---|
| 雪吹(ふぶき) | 中次の上下の角を面取りしたもの。名は雪の吹きだまりに由来。 |
| 金輪寺(きんりんじ) | 後醍醐天皇ゆかりと伝わる筒形。蓋が深くかぶさる。 |
| 白粉解(おしろいとき) | 化粧道具からの見立て。小振りで愛らしい。 |
| 薬器(やっき) | 薬入れの見立て。すらりとした立ち姿。 |
| 頭切(ずんぎり) | 上部を水平に切り落とした形。潔い姿。 |
蒔絵の棗は、図柄の季節をその日の席に合わせるのが約束です。桜は春、蛍や流水は夏、薄や月は秋、雪輪や松は冬。無地の真塗は季節を選ばないので、一つ持っておくと重宝します。
節気ごとの図柄の合わせ方は「二十四節気と茶道具」のページに一年分まとめてあります。
| 漆の状態 | ひび・剥げ・艶引けを確認。直射日光による退色は戻らない。 |
|---|---|
| 合口の閉まり | 蓋がすっと吸い付くように閉まるものが良品。緩み・がたつきは要注意。 |
| 蒔絵の擦れ | 金蒔絵は使用で擦れる。図柄の輪郭が残っているか拡大して確認。 |
| 共箱・塗師 | 塗師の署名箱があるか。輪島・山中など産地の表記も価格の目安。 |
部位の名称と扱い方は棗の基本ページにまとめています。