二十四節気は、太陽の動きで一年を二十四に分けた暦。茶の湯のしつらえは、この暦とともにめぐります。道具合わせに正解はありませんが、季節を半歩先取りするのが茶人の心得。節気ごとの茶花・茶杓の銘・茶碗と棗の図柄を、一年のカレンダーにまとめました。
炉十一月〜四月 風炉五月〜十月 名残季節の変わり目
立春
りっしゅん
2月4日頃
春の始まり。二月は大炉の季節。冬の名残と春の気配が同居する、一年でいちばん心の弾む頃。
七十二候MICRO-SEASONS
東風解凍はるかぜ こおりを とく
春の東風が、厚い氷を解かしはじめる。
黄鶯睍睆うぐいす なく
山里に鶯の初音がひびく。
魚上氷うお こおりを いずる
割れた氷の間から魚が跳ねる。
雨水
うすい
2月19日頃
雪が雨に変わる頃。雛の趣向がはじまり、貝合わせの香合が愛らしい季節。
七十二候MICRO-SEASONS
土脉潤起つちのしょう うるおい おこる
雨に土がしめり、いのちが動きだす。
霞始靆かすみ はじめて たなびく
遠くの山に霞がたなびきはじめる。
草木萌動そうもく めばえ いずる
草木がいっせいに芽を吹く。
啓蟄
けいちつ
3月6日頃
虫が土から顔を出す頃。釣釜に替えて火を畳から離し、揺れる釜に春を感じる。
七十二候MICRO-SEASONS
蟄虫啓戸すごもりむし とを ひらく
土の中の虫が戸を開けて出てくる。
桃始笑もも はじめて さく
桃のつぼみがほころぶ。「笑う」は咲くこと。
菜虫化蝶なむし ちょうと なる
青虫が羽化して紋白蝶になる。
春分
しゅんぶん
3月21日頃
昼と夜が等しくなる彼岸の頃。月末の利休忌を控え、侘びた道具組が似合う。
七十二候MICRO-SEASONS
雀始巣すずめ はじめて すくう
雀が巣づくりをはじめる。
桜始開さくら はじめて ひらく
桜がほころびはじめる。
雷乃発声かみなり すなわち こえを はっす
春の雷が遠くで鳴りはじめる。
清明
せいめい
4月5日頃
すべてが清らかに明るくなる頃。透木釜(すきぎがま)で火を隠し、桜を存分に。
七十二候MICRO-SEASONS
玄鳥至つばめ きたる
南から燕が帰ってくる。
鴻雁北こうがん かえる
雁が北へ帰っていく。
虹始見にじ はじめて あらわる
雨上がりに虹が見えはじめる。
穀雨
こくう
4月20日頃
春の雨が田畑を潤す頃。炉の季節の終わり、八十八夜の新茶に思いを寄せて。
七十二候MICRO-SEASONS
葭始生あし はじめて しょうず
水辺に葦の若芽が伸びる。
霜止出苗しも やんで なえ いずる
霜が終わり、苗代の苗が育つ。
牡丹華ぼたん はなさく
牡丹が大輪の花をひらく。
立夏
りっか
5月6日頃
初風炉。しつらえを一新し、火を客から遠ざける。一年の折り返し。
七十二候MICRO-SEASONS
蛙始鳴かわず はじめて なく
田に蛙の声が満ちる。
蚯蚓出みみず いずる
蚯蚓が土から顔を出す。
竹笋生たけのこ しょうず
筍が地面を割って伸びる。
小満
しょうまん
5月21日頃
万物が満ち満ちる頃。新茶の季節、青竹の蓋置が瑞々しい。
七十二候MICRO-SEASONS
蚕起食桑かいこ おきて くわを はむ
蚕が桑の葉を盛んに食べはじめる。
紅花栄べにばな さかう
紅花が一面に咲きそろう。
麦秋至むぎのとき いたる
麦が黄金に熟す「麦の秋」。
芒種
ぼうしゅ
6月6日頃
稲を植える頃、梅雨の入り。雨音を楽しむ道具組を。
七十二候MICRO-SEASONS
螳螂生かまきり しょうず
蟷螂が卵からかえる。
腐草為蛍くされたるくさ ほたると なる
朽ちた草が蛍になる、と信じられた頃。
梅子黄うめのみ きばむ
梅の実が黄色く熟す。梅雨の語源とも。
夏至
げし
6月21日頃
一年で最も昼が長い日。目にも涼しい取り合わせを。
七十二候MICRO-SEASONS
乃東枯なつかれくさ かるる
靫草(うつぼぐさ)だけが夏に枯れる。
菖蒲華あやめ はなさく
あやめが花をひらく。
半夏生はんげ しょうず
半夏が生え、田植えを終える目安。
小暑
しょうしょ
7月7日頃
七夕。梶の葉の趣向、葉蓋の点前で涼一味。朝茶事の季節が始まる。
七十二候MICRO-SEASONS
温風至あつかぜ いたる
熱を含んだ風が吹きはじめる。
蓮始開はす はじめて ひらく
蓮が夜明けに花をひらく。
鷹乃学習たか すなわち わざを ならう
鷹の幼鳥が飛ぶことを覚える。
大暑
たいしょ
7月23日頃
暑さの極み。名水点(めいすいだて)や洗い茶巾で、水そのものを馳走に。
七十二候MICRO-SEASONS
桐始結花きり はじめて はなを むすぶ
桐が来年の花芽を結ぶ。
土潤溽暑つち うるおうて むしあつし
土が湿り、蒸し暑さが極まる。
大雨時行たいう ときどきに ふる
夕立が時おり激しく降る。
立秋
りっしゅう
8月8日頃
暦の上の秋。残暑の中に秋草をひとつ忍ばせるのが心憎い。
七十二候MICRO-SEASONS
涼風至すずかぜ いたる
風の中に、かすかな涼しさが混じる。
寒蝉鳴ひぐらし なく
蜩が朝夕に鳴く。
蒙霧升降ふかききり まとう
深い霧が立ちこめる。
処暑
しょしょ
8月23日頃
暑さがおさまる頃。虫の音が主役になる。
七十二候MICRO-SEASONS
綿柎開わたのはなしべ ひらく
綿を包む萼(がく)がひらく。
天地始粛てんち はじめて さむし
暑さがようやく鎮まりはじめる。
禾乃登こくもの すなわち みのる
稲が実り、穂を垂れる。
白露
はくろ
9月8日頃
露が白く光る頃。月の意匠が主役に。
七十二候MICRO-SEASONS
草露白くさのつゆ しろし
草の露が白く光る。
鶺鴒鳴せきれい なく
鶺鴒が鳴きはじめる。
玄鳥去つばめ さる
燕が南へ帰っていく。
秋分
しゅうぶん
9月23日頃
名月の頃。風炉を畳の中央に寄せる「中置」で、火を少し客に近づける。
七十二候MICRO-SEASONS
雷乃収声かみなり すなわち こえを おさむ
雷が鳴りやみ、空が澄む。
蟄虫坏戸むし かくれて とを ふさぐ
虫が土に戸を閉ざす。
水始涸みず はじめて かるる
田の水を落とし、稲刈りにそなえる。
寒露
かんろ
10月8日頃
露が冷たくなる頃。実りと紅葉の意匠へ。
七十二候MICRO-SEASONS
鴻雁来こうがん きたる
雁が北から渡ってくる。
菊花開きくのはな ひらく
菊が咲きそろう。重陽の名残。
蟋蟀在戸きりぎりす とに あり
蟋蟀が戸口で鳴く。
霜降
そうこう
10月23日頃
風炉の名残。中板・小板に破れ風炉、一年で最も渋い茶を楽しむ。
七十二候MICRO-SEASONS
霜始降しも はじめて ふる
初霜が降りる。
霎時施こさめ ときどき ふる
時雨がぱらぱらと通りすぎる。
楓蔦黄もみじ つた きばむ
楓や蔦が色づく。
立冬
りっとう
11月7日頃
炉開き・口切の茶事。茶人の正月。新しい茶壺を開け、善哉で祝う。
七十二候MICRO-SEASONS
山茶始開つばき はじめて ひらく
山茶花が咲きはじめる。
地始凍ち はじめて こおる
大地が凍りはじめる。
金盞香きんせんか さく
水仙が香りはじめる。
小雪
しょうせつ
11月22日頃
初時雨の頃。照葉と初雪が同じ景色に並ぶ。
七十二候MICRO-SEASONS
虹蔵不見にじ かくれて みえず
虹を見かけなくなる。
朔風払葉きたかぜ このはを はらう
北風が木の葉を払い落とす。
橘始黄たちばな はじめて きばむ
橘の実が黄色く色づく。
大雪
たいせつ
12月7日頃
本格的な冬。日が短く、夜咄(よばなし)の茶事へ。短檠の灯りで囲む一服。
七十二候MICRO-SEASONS
閉塞成冬そら さむく ふゆと なる
空が閉ざされ、真冬になる。
熊蟄穴くま あなに こもる
熊が穴にこもる。
鱖魚群さけのうお むらがる
鮭が群れて川をのぼる。
冬至
とうじ
12月22日頃
一陽来復。柚子の香合で無病息災を願い、太陽の還りを祝う。
七十二候MICRO-SEASONS
乃東生なつかれくさ しょうず
靫草だけが芽を出す。
麋角解さわしかの つの おつる
大鹿の角が落ちる。
雪下出麦ゆきわたりて むぎ いずる
雪の下で麦が芽を出す。
小寒
しょうかん
1月6日頃
寒の入り、初釜の季節。結び柳に嶋台茶碗、晴れやかな正月のしつらえ。
七十二候MICRO-SEASONS
芹乃栄せり すなわち さかう
芹が盛んに育つ。七草の頃。
水泉動しみず あたたかを ふくむ
凍った泉が動きはじめる。
雉始雊きじ はじめて なく
雉の雄が鳴きはじめる。
大寒
だいかん
1月20日頃
寒さの極み。筒茶碗に絞り茶巾の点前で、湯気ごと温かさを差し出す。
七十二候MICRO-SEASONS
款冬華ふきのはな さく
蕗の薹が顔を出す。
水沢腹堅さわみず こおりつめる
沢の水が厚く凍りつめる。
鶏始乳にわとり はじめて とやにつく
鶏が春を感じて卵を産みはじめる。
銘は茶杓につける雅名で、席の主題を語るもの。ここに挙げたのは定番の一例です。決まりごとというより、その日の空や庭を見て亭主が選ぶもの——気に入った言葉があれば、それがあなたの銘になります。
炉と風炉の替わり目やしつらえの基本は「炉と風炉のしつらえ」のページで詳しく解説しています。